花ハス(蓮)の育て方(その1):季節ごとの管理と花を咲かせるコツ

花ハス(蓮)の魅力と睡蓮との違い

ハスの花の魅力

ハスは、中国から渡来し奈良時代には万葉集にハスの和歌が詠まれたり、仏教では極楽浄土に咲く花とされ、古くから慈しまれてきました。泥の中から清らかな花を咲かせるため、インドでは聖者の花、中国では君子の花といわれています。

初夏を彩る花は数々ありますが、お寺の池やお城の堀などで一斉に咲いているハスの花をよく見かけるのではないでしょうか。中でも「大賀ハス」は、約2000年前の古ハスと推定され世界最古の花として脚光をあびました。

花の色は、ピンクや白や黄色などがあります。世界にはピンクや白の花を咲かせるアジア系の「ハス」と、アメリカに分布し黄色い花を咲かせる「キバナハス」の2種があり、両種の交雑により、多くの園芸品種が誕生しています。

ハスの名所(関東・東京近郊のスポット)

  • 不忍池(東京都 「上野駅」から徒歩6分)
    7月下旬〜8月上旬。江戸時代より浮世絵に描かれる程のハスの名所。ハス観察ゾーンが設置してあり、かって不忍池に生育していたハス4種と大賀ハスを、至近距離で楽しむことができます。
  • 薬師池公園(東京都 「町田駅」からバス15分 「薬師池」下車)
    7月中旬〜8月中旬。園内の北端部にはハス田が設けられ、大賀ハスが咲き誇る。見頃の時期に合わせて「観蓮会」が開催され、象鼻杯(ハスの葉にお酒や飲み物を注ぎ、茎から飲む)などが行われます。
  • 三渓園(神奈川県 「根岸駅」からバス10分 「三渓園前」下車)
    7月上旬〜下旬。創設者が好んだがハスが鑑賞できる。開花時期に合わせ、早朝6時に開園「早朝観蓮会」。茶屋で販売される早朝限定メニューの朝ごはんも人気。
  • 千葉公園(千葉県 千葉モノレール「千葉公園駅」下車、JR・京成「千葉駅」徒歩10分)
    6月中旬から下旬にかけて開催される「大賀ハスまつり」。象鼻杯体験や、各種演奏、販売、講習会などイベント盛りだくさん。
  • 水郷佐原水生植物園(千葉県 「佐原駅」からバス20分 「水生植物園入口」下車)
    6月下旬〜9月中旬。ハスでは300品種以上と品種数で日本一の規模を誇る。「早朝観蓮会」や、象鼻杯やハス茶を楽しめるイベントが開催される。
  • 古代蓮の里(埼玉県 「行田駅」からバス21分 「古代蓮の里」下車)
    6月中旬〜8月中旬。古代ハス(行田ハス)が約10万株、世界の花ハスが約2万株、計12万株の花ハスが見られる。

ハスの花の命は4日間!?

参考ハスの花の4日間 | 大賀ハスの魅力

ハスは、花の咲き方もちょっと神秘的です。開花初日は早朝から10時頃までお猪口(ちょこ)のように咲き、2日目にはお椀のように11時頃まで咲き、午後には蕾に戻ってしまいます。3日目は2日目と同じ経過をたどり、昼過ぎから夕方頃まで咲き、そして4日目に散ってしまいます。

  • 開花初日(花びらの先が少しずつ開いていきます)
    早朝4~5時頃から花弁がゆるみ始め、とっくり型に3~4cmほど開いたのち、全開せずに8時頃には閉じ始めてつぼみの状態に。雄しべが果托(蜂の巣に似た形状のハスの実)に密着しています。

  • 2日目(この頃のハスの花がもっとも美しい時です)
    早朝より咲き始め、朝7~9時頃に満開になります。花容が最も優美になり、その後また、つぼみの状態にもどります。葯が開いて香りが強まり、雌しべの先が濡れ、果托は黄色みを帯びます。

  • 3日目(朝9時頃に全開し、花径が最大となります)
    早朝より咲き始め、9~10時頃に全開して花径が最大となります。花色はややあせ、昼頃に閉じ始め半開の状態で終わります。花托が緑色を帯びてきます。

  • 4日目(花弁が少しずつ散り始めます)
    8時頃までに全開となり、花弁が少しずつ散り始め午後3時過ぎには完全に散ります。花の退色が進み、果托上面は緑が濃くなり、雌しべの先が黒ずんできます。

こうして4日間のハスの花の命が終わります。たった4日の短い命を輝かせているハスの花、見事で素晴らしいです。

ハスと睡蓮の違い

項目 ハス(Lotus) 睡蓮(Water lily)
分類
ヤマモガシ目ハス科

スイレン目スイレン科
円形で切れ込みがない
浮き葉+立ち葉
撥水性があり、光沢がない
円形で切れ込みがある
浮き葉のみ
撥水性がなく、光沢がある
水面から高く出て咲く

花が終わると水上で花びらが散る
果托ができる

温帯産は水面に咲く
熱帯産は水面から突き出て咲く
花が終わると閉じて水中に沈む
果托ができない
地下茎が肥大し蓮根になる

温帯産はワサビ形の塊根
熱帯産は球根形の塊根

栽培カレンダー

出典ハスの育て方 – みんなの趣味の園芸 NHK出版

季節ごとの生育サイクルと管理ポイント

参考ベランダで蓮を育てる本・追補版

  • とにかく水を切らさないこと
    水は成長期の春~夏はもちろん、秋に地上部が枯れたあとも必ず常に溜めておくようにします。

  • それから日当たりに気を配ること
    置き場を決めたときには一番日当たりのよい場所だったのに、気がついたら半分日陰に入っていた、なんてこともあり得ます。

春の管理(4月~6月)

ハスは春に浮き葉が出始め、これが5~6枚ぐらいになる一か月後には立ち葉が伸びてきます。そしてその立ち葉が生長していき、6月頃には花芽が水中から現れ約20日後に開花します。

ハスは節のある地下茎を持ち、その節のつなぎ目から葉と花と根を出します。葉と花はいずれも、1つの節から1つずつしか出てきません。
ですから、ハスの生長は地下茎の節がどれだけ増えるか(地下茎がどれだけ伸びられるか)に大きく左右されます。

2019年6月17日に知人より戴いた株分け株

(撮影:2019年6月18日)

  • 浮き葉が出る
  • 立ち葉が出る
    比較的新しい葉は縁がきれいに波打って上を向いています(左)。立ち葉が古くなってくると、全体的に張りがなくなってきます(右)。


    (撮影:2019年7月30日)

    (撮影:2019年7月30日)
  • 花芽が出る
    水中から花芽が伸びてきました。株を戴いてから約20日の間に、立ち葉3本と浮き葉4枚が出てきました。

    • ハス(蓮):花芽1本、立ち葉5本+幼葉1本、浮き葉7枚+幼葉1枚

    (撮影:2019年7月10日)

    2本目の花芽が伸びてきました。右下は2日後に咲いた一番花と一緒に撮影(印)。

    • ハス(蓮):花芽2本、立ち葉8本+幼葉1本、浮き葉5枚

    (撮影:2019年7月27日)

    3本目の花芽が伸びてきました。左下は一番花の果托と二番花の蕾と一緒に撮影(印)。

    • ハス(蓮):花芽2本、立ち葉9本+幼葉1本、浮き葉6枚

    (撮影:2019年8月4日)

夏の管理(7月~9月中旬)

開花のピークは7~8月中旬頃になります。夏が終わり気温が下がってくると最後の立ち葉(止め葉)が出てくるのを合図に、茎の生長が止まります。

  • 開花
    花芽が水中から現れて19日後に開花しました。

    (撮影:2019年7月29日 6時44分)

    開花2日目(花の直径:19cm)

    (撮影:2019年7月30日 6時23分)

    開花3日目

    (撮影:2019年7月31日 7時16分)

    開花4日目

    (撮影:2019年8月1日 8時47分)

    午後1時には花弁が完全に散り、果托上面は緑が濃くなり、雌しべの先が黒ずんできました。

    (撮影:2019年8月1日 12時46分)

    2番花の花が咲きました。蕾が水面に現れて10日目です。右の蕾は3番花の蕾です。

    (撮影:2019年8月6日 6時25分)

    3番花の花が咲きました。蕾が水面に現れて9日目です。撮影が午後0時だったので花弁が蕾の状態に戻りつつあります。右横の果托は1番花の、左下は2番花の果托です。

    (撮影:2019年8月13日 12時09分)

    ハチの巣のように見えている部分を果托といいます。初めは緑色ですが、だんだんと茶色に色が変わります。
    ハスの実は、花が咲いてから3週間ほどで収穫できるようになります。果托の穴の中に、どんぐりのような緑色の実が育ってきました。

    (撮影:2019年8月31日)

  • 止め葉が出る
    8月半ばを過ぎたくらいから蕾が出てこなくなります。花の時期の最後に、一番大きくて背の高い立ち葉(止め葉)が出ます。止め葉が出ると、来春芽を出すための栄養を蓄えた太い「蓮根(レンコン)」を作り始めます。

    止め葉が出た後は、小さめの葉がちらほら出ることはあっても、ちゃんとした大きな葉はもう出て来ません。大きな葉が出てこなくなったら花は終わり、と考えればいいと思います。
    また、「これが止め葉だ」とはっきり見てわかるものではありませんが、あとになって「ああ、あれが止め葉だったんだな」と思い当たります。


    (撮影:2019年9月2日)

秋の管理(9月下旬~11月上旬)

秋から初冬になると茎や葉は茶色くなり枯れて折れます。晩秋まで地下茎はまだまだ伸びますし、その後は地下茎が肥大を始めます。この頃まで肥料分が必要ですので追肥を続けて下さい。ただし最盛期ほどは必要としませんので、かなり少なめ(元肥の半量以下)で充分です。

  • 花や果托が枯れる

冬の管理(11月中旬~3月)

土の中の蓮根まで凍ってしまうような場所でなければ戸外で冬越し可能です。冬には蓮根の先端の節は太くなっており、完全な休眠に入ります。春の植え付けには、この太くなった先端の蓮根を使用して植え付け・株分けを行います。

  • 休眠期

花ハス(蓮)の栽培環境~上手に花を咲かせるコツ

参考蓮の栽培方法・育て方 京都花蓮研究会

容器

ハスの花を育てるのには円形の大きくて深さのある容器が必要です。地下茎が角にぶつかると成長が悪くなるので四角い容器は避け、口径は最低でも直径30cm、深さ25cm以上は欲しい。大きいほど良く、水が漏れない構造ならば材質は何でもOKです。

用土

ハスの花は泥の中から茎を伸ばして花を咲かせます。用土は粘土質の土が良く、田んぼの土か、田んぼの土と同じような性質の「荒木田土(あらきだつち)」がベストですが、安価な「赤玉土」でも十分です。

肥料

水中での使用ですので、肥料は溶け出しが早くなり肥効が短くなりますので、説明書よりも「少な目の量を、こまめに与える」のが基本となります。

元肥

元肥として、緩効性化成肥料(N-P-K=10-10-10)を用土に混ぜておきます。

追肥

月に一度(4月から9月まで)IB化成肥料(N-P-K-Mg=10-10-10-1)(IB化成とは:窒素を水に溶けにくい形にし、ゆっくり溶けて窒素の肥効が長続きするようにした肥料)を追肥します。花が散っても、葉が枯れるまでは追肥を行います。

4月中旬頃から葉色を見ながら、直径30cmの容器で、大豆粒大のIB化成を5~10粒程度を目安に10日~2週間に1度程度与えて下さい。普通の鉢物と異なり養分が全て容器内に留まるので、やりすぎに注意して下さい。

肥料をやりすぎると藻が茂るので注意します。もし藻が茂ったら取り除き、水を1/3~1/4程度入れ替えます。

日当たり・置き場所

ハスの花を咲かせるのには日当たりが重要です。終日よく日が当たる場所に置いて管理します。日当たりが悪いと、花があまり咲きません。
少なくとも4~5時間以上は直射日光が当たる場所で管理するのが理想です。最低でも4時間以上日が当たらないと花が咲きにくくなるので、注意が必要です。

葉っぱが水面に茂りすぎ、茎に光が当たらないと枯れることがあります。変色した茎や茶色くなった葉は早めに取り除き、株元に日が当たるようにしましょう。

水管理

水位は、土の表面から10~20cm位まで水を溜めます。夏場は特に蒸発やハスの吸収などで水切れが起こりやすいため、葉の縁がしわしわになってきた場合、水不足が考えられます。夏場は水位を20cmほどに保つと安心です。
冬場は水位が低くなると蓮根が凍る危険性が高まるので、10cm前後の水位を保ってください。

灌水は、ジョウロなどを用いて水中にたくさんの酸素が溶け込むように行います。水の交換を怠ると油膜のような汚れが水面に浮かんできてしまうことがあります。水面の油膜状に浮遊する汚れを洗い流すように、水が溢れるようにして交換します。

温度管理

ハスは暑さ寒さには強く、夏場に日光が良く当たり、水温が上昇することで活動が活発になります。夜は葉を冷やすために打ち水をすると良いでしょう。冬場は根が休眠するため土が凍らない程度の寒さならば大丈夫です。

花殻つみ・黄葉とり

花殻を放置すると実を結び株が衰弱するため、早めに花托を摘み取ります。また、散った花弁や雄しべが葉の上に落ちると、腐敗して葉が部分的に枯れるので、見つけ次第排除します。

生育期に黄色く変色した葉は、下から出てくる新芽を陰にするため、早めに摘みとります。ただし、8月中旬以降の葉は、蓮根に養分を供給する大切な器官であるため、枯れるまで残します。

ハスの茎には蓮根と同じく空気の通る穴があいています。この穴は地下茎まで続いているので、茎を水中で切ってしまうと地下茎まで水が入ってしまいます。
枯れた花や葉を取り除くときは水面より上で切った方がいいらしいです。

植え付け・株分け

年1回植え替えないと、花が咲きにくくなります。成長を開始する3月、春の彼岸からソメイヨシノが散る頃までに株分けを兼ねて植え替をします。新芽をつけた塊茎を、先端から2節半もしくは3節半のところでカットし、容器の底に水平に植え付けます。大事な頂芽(先端の新芽)を傷めないように気をつけて行って下さい。最低一株に新芽を3ヶ以上付けて株分けすると良いです。

植え付けた種蓮根は、必ず萌芽するとは限らないので、株分けした残りの蓮根は予備として水に浮かべて残し、日なたで管理します。5月中・下旬になっても、萌芽がみられない場合は、土中で腐敗している可能性があるので、予備として残しておいた蓮根を植え直します。この際、予備蓮根からは浮き葉が出ているので、葉を水没させないように植え付けましょう。

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